大森 さやか   Sayaka Omori

   2010.9.6(mon)-9.11(sat)

   
展覧会タイトル 「黒子の住む森」


    2009年の個展

「半眼」
キャンバス・油彩  1816×2273mm

【作家コメント】

- 黒子の住む森 -

白い箱の中で緊張感が漂っていた。
静かに居る。白い手で右目を翳しこちらを見ている黒子が、居る。
小さな木の実を一口だけ噛み、汁を零しながら藁に耳を当て微かな音を聞く。

灰色の髪をした黒子は全てを見渡し深呼吸をした。

さぁ、始めよう。

一つ。血相を変えたでかい繭。僕に寄い添ってくる。冷たく白い光を帯びた繭は、
頭の上から垂れてくる。濡れながら体内の水分を取りながら、足まで降りてくる。
その瞬間、白い箱が縮小し、足先から湿った藁がこぼれだす。

二つ。礼拝堂の前で薔薇を被る女。
陽気なダンスに身を委ね、陽気な今宵に身を委ね。
お箸を少しだけおかじりながら。

三つ。薔薇を被るカノジョの声。彼女は口を動かし声は出さずにこう言った。
「KOBINOJAPAN」。
そして小刻みに足を揺らし、親指を藁で覆い隠した。内緒の話。

単純に、大地に足を立て、両手で空を掴むべきではないか。

何故か。

藁はこぼれ落ち、空は大きな悲しみの音をたて、僕の身体へと怒りを持って入ってきた。
魂だけの場所。

あぁ、悲しい。
羽衣の誕生である。

そして僕は結局何もなかったかのように、ゆっくりと手で目を覆い隠す。
僕は目が大事なのだ。

終りの時間-A
ゆっくりした時間の中で、白い箱の隅で赤い木が熟した。
熟す流れと共に、灰色もバーミリオンも流れへと。礼拝堂へと。鳥居へと。多摩境へ、と。徒然たる。
全てが終わった-B。

静かな森の中で、黒子がしゃがんでいるのが微かに見えた。

あれが、現実か、いやはや。
黒子の住む森、想像たれ。



【プロフィール】
1984年 福岡県生まれ
2007年 大阪芸術大学美術学科油画コース卒業
2009年 多摩美術大学大学院美術研究科修了 

<個展>
2009年 ギャラリー58(東京)

<グループ展>
2008年 「第28回 史水展」 SPAZIO BRERA GINZA(東京)
      「Art & Design 国際講評会」 清華大学美術学院(北京)
2010年 「ペインター4人展 Four painters Exhibition『 感じる世界、紡ぎだす物語 』」 GALLERY M(愛知)

<受賞>
2008年 第44回神奈川県美術展 特選受賞(神奈川県民ホールギャラリー・厚木市文化会館/神奈川)
2009年 第6回はるひ絵画トリエンナーレ 優秀賞受賞(はるひ美術館/愛知)